神社の社殿には、屋根を延長するような格好で二本の木が突き出していたり、交差した木が載っていたりします。これを 「千木(ちぎ)」 といいます。
千木には、その切り口が地面と水平方向になったもの (内削ぎと呼ぶ)、垂直方向になったもの (外削ぎと呼ぶ) があります。
また、屋根の上には俵型した木が並んで載せられています。これを 「鰹木(勝男木:かつおぎ)」 といいます。
千木が 内削ぎ であるか 外削ぎ であるか、また 鰹木 が偶数であるか奇数であるかで、社殿に祀られている神様が男神であるか女神であるか知ることができるという方がいますが、これは誤りです。
聞かれることが多いので記しておきます。
伊勢の神宮では、皇大神宮(内宮)の御正宮の千木は内削ぎ、鰹木は偶数本、豊受大神宮(外宮)の御正宮の千木は外削ぎ、鰹木は奇数本であり、御祭神である天照大神は女神、豊受大神は男神であることに起因するのだと思われます。
確かに、伊勢の神宮では、両宮の御正宮はそうなっていますが、しかしこれが全ての神社にあてはまる訳ではないのです。それどころか、神宮の内部でもそういう法則にはなっていません。
[11回]
まず、単純に反例を挙げるならば、当神社の御社殿が挙げられます。
主祭神、五十猛命は男神ですが、祀る社殿の千木は外削ぎ、鰹木は偶数本。
そして、両脇宮には、五十猛命の妹神である大屋津姫命、都麻津姫命の両女神が祀られていますが、社殿の千木は外削ぎで鰹木は奇数本です。
すでに、男神=外削ぎの千木&奇数本の鰹木、女神=内削ぎの千木&偶数本の鰹木という組み合わせすら崩れています。
「そんな神社は稀であり、伊太祁曽神社がその内の1つだ」 と反論される方もいるかと思いますが、実は神宮の組み合わせ通りではない神社は数多くありますし、仮に千木と鰹木の組み合わせが一致していても祭神との組み合わせが異なっている例もあります。
そもそも、伊勢の神宮でも御祭神の男女の別と、千木鰹木の組み合わせはこの通りではありません。
神宮の別宮の中で、一番顕著な例で説明すると次のとおりになります。
内宮別宮、外宮別宮の両方に共通して祀られている祭神として月読命がいらっしゃいます。イザナギノ命が禊をされたときに、天照大神、須佐男神と共に生まれた神様です。
内宮では月読宮、外宮では月夜見宮としてそれぞれに祀っていますが、それぞれの社殿は
月読宮(内宮別宮) 千木内削ぎ、鰹木偶数本
月夜見宮(外宮別宮) 千木外削ぎ、鰹木奇数本
となっています。同一祭神ですから、当然性別は同じはずですが、この様に千木の形態と鰹木の本数が異なっています。このことから、お祀りしている御祭神の性別と千木の形態や鰹木の本数に関連は無いことはお分かりいただけるかと思います。
ただ、神宮の場合、千木の形態と鰹木の本数には別の規則があります。
察しの良い方は既にお気づきだと思いますが、
千木が内削ぎで鰹木が偶数本の社殿 → 内宮の別宮、摂社、末社、所管社
千木が外削ぎで鰹木が奇数本の社殿 → 外宮の別宮、摂社、末社、所管社
こういう決まりになっているようです。つまり、神宮に限って言えば 千木の形態と鰹木の本数(偶数か奇数)の組み合わせは決められているということです。
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