その4 で指摘された、外国産割り箸に用いられている材についても、可能であれば迫ってみたいと思います。(あまり期待しないでくださいね・・・)
林野庁の「木材需給表」によると、日本国内での木材利用量は輸入材もあわせると年間8,700万立米(平成17年度統計)といいます。4億本超の立木に相当する量です。(国産材に限っても560万立米、2,800万本の立木に相当します。)
つまり、日本国内で消費される木材量に占める割り箸の割合は僅か1%にも満たない量です。パルプ・チップ用に消費される木材が約1億8000万本分ですから50%近くを占めています。むしろこちらを減らす努力をするほうが現実的ではないかと思ってしまいます。
それでは割り箸にはどの様な木が用いられているのでしょうか?もともとは杉や竹で作られたといいます。奈良県吉野で大正時代に端材の有効活用として今日の割り箸が大幅に普及したという歴史を踏まえると、確かに杉などからはじまったのでしょう。
今では、これらに加えて、ヒノキやエゾ松などを用いたものが高級割り箸に分類されています。他にも白樺やアスペンなどが普及品として用いられています。
箸として使うわけですから、折れない程度の強度は必要ですが、家の柱ほどの強度は必要ないため、白樺やアスペンも用いられているのです。それぞれの特徴としては次のことが挙げられます。
杉 木目が美しく、またきれいに割れるが適度な強度があるため重宝される。多くは建築資材の端材が利用される。
桧 木肌がなめらかで香りがよく、殺菌・防カビ力がある。建材端材が利用されるが歩留まりがよいのが特徴。
エゾ松 木肌が細かく、木目がまっすぐで割りやすい。建築端材を活用して作られていたが、北海道の割箸製造業が激減しており、最近は使用量が減っている。
白樺 粘り強い木質と安価であることから普及用割り箸として用いられる。樹液が多いため利用されずに倒木放置されることが多かったが、割り箸製造過程で樹液を取り除くことに成功し、有効活用している。
アスペン 木質はやわらかいが、白くて軽く安価。マッチの軸木などにも用いられる。紙パルプ資材としても多く日本に輸入される。
竹 きれいに割れる、油をはじくなどの特徴があり、古くから割り箸材料として用いられてきた。カビが生じやすいのが欠点。
割り箸を使うのは森林破壊になるのか? その7 (平成20年5月26日)
割り箸論争の7回目です
中国での割り箸製造の現状について記してみたいと思います。
中国産の割り箸と一概に言いますが、北部と南部では随分と様子が異なるようです。中国北部では100~200名の大規模工場で木製箸が、南部では10名程度の小規模工場で竹製箸が製造されているようです。
北部で製造されている木製箸の材料はシラカバやアスペンが多いようです。
これらは皆伐方式で伐採されるため手間がかからず、安価に供給されます。しかも中国政府では伐採後の植林を義務付けているにもかかわらず、行われていないのが実情のようです。また、中国で製造される木製箸の全てが中国産材木ではありません。割り箸のためにロシアやモンゴルから材木を輸入しています。中国製割り箸の2/3がこれらから輸入した材木で製造されているようです。残念ながら樹種までは調べられませんでしたが・・・。
日本と比べて、手間のかからない皆伐方式を採用し、伐採した材を丸々割り箸に用いるので低コストで製造できます。しかも伐採した後を植林しませんから苗木などの費用もかかりません。そんなこんなで中国製割り箸は国産よりも運賃を含めても安い値段で流通しています。これが中国製割り箸が圧倒的なシェアを占めている理由のようです。
中国製割り箸については別の視点からの問題点も指摘されています。漂白剤の使用です。漂白剤には「亜硝酸塩」が用いられることが多いようですが、この物質は発癌性が強いとされ、食品添加物としての使用に禁止や厳しい制限を設けている国が多いようです。更に問題なのは、漂白に使用した亜硝酸塩を洗い流す工程のない工場があるとか・・・。もっとも亜硝酸塩を用いて漂白するのは主に竹箸のようですが。
ちなみに、こういう事態が発生する背景には、日本では食品添加物としての使用が禁止されているが、中国では禁止されていないという状況があるようです。他にも二酸化硫黄や防カビ材、防腐剤が多く残留している場合もあるようで、厚生労働省が監視しているようです。
スーパーやコンビニで使用されている割り箸の製造国と漂白等の安全性について調査したサイトを見つけましたので紹介しておきます。
Colorful
割り箸を使うのは森林破壊になるのか? その8 (平成20年6月2日)
割り箸論争の8回目です。
割り箸論争について、少し違う視点から見てみたいと思います。具体的には「マイ箸」「エコ箸」を使うと本当に環境保護になるのかということ。
確かに使い捨ての割り箸を使用しなくなりますので、なんかとっても環境にやさしいように思います。ではマイナス面は無いのでしょうか?
まずは、マイ箸の材料。物によっては石油資源を加工した製品もありますね。これはやはりNGではないでしょうか?
マイ箸普及のために次から次へと製品開発をして、それぞれを包装してゆく。消費者の中には新しい箸がでるとまたそれを購入する人がいるとも聞きます。有名タレントがマイ箸を薦めれば、既にマイ箸を持っていても同じデザインのものを買いに行く。これもNGだと思います。
使用したマイ箸は当然洗わなくてはなりません。外食した店舗で何度も使えるお箸がおいてあるのであれば他の食器と共に洗いますが、各個人が持参したマイ箸をそれぞれが持ち帰って箸だけ洗うことがあれば、これは水資源の無駄にも繋がります。洗剤を用いれば水質汚染にも・・・。
マイ箸のデメリットを少しあげてみました。こじつけ的な感じもしないでもないですが、そういう面もあるということを頭の片隅に置いておいてください。マイ箸の使い方を間違えればエコロジーにはならないのです。
割り箸を使うのは森林破壊になるのか? その9 (平成20年6月9日)
割り箸論争も振り返るともう9回目。2ヶ月に亘って掲載しているのですね。
そろそろまとめをして、一旦終わりにしたいと思います。
割り箸は木を伐採して生産される。木を伐るのは地球環境によろしくない。というのがそもそも割り箸の使用を控えて、マイ箸・エコ箸を使おうという運動の骨子だということでした。
一方で、割り箸は間伐材や端材を用いて作られており、捨てられてしまう材木の有効活用なのだから使わなくてはいけないという意見があることも確認しました。
ところが割り箸作りの現状は、9割超が輸入であり、しかも大方が中国であること。中国で製造される割り箸は端材や間伐材ではなく、1本の木をそのまま原料としていることがわかりました。更に中国政府は伐採した後に植林することを義務付けているにもかかわらず、ほとんど実施されていないのが実態だということもわかってきました。
しかし、同時に国内の森林では多くの間伐材が山に捨てられている実情もわかりました。更に人手不足や原木価格の低迷のため、十分な間伐ができず、間伐が行われないことで森林の育成が十分でないというマイナスのスパイラル構造に陥っていることもわかってきました。
それでは、今後どの様にするのが良いかということですが、いろんなかたがたと意見を交換させてゆく中で、「端材を用いたマイ箸を作ってみるのはどうかな」という意見が出てきました。それも作ったものを配ったりするのではなく、それぞれが自分や家族のために木を削って箸を作ってみようかと・・・。
伊太祁曽神社は木の神様を祀っている関係上、材木屋さんたちとの交流があり、彼らと話す中でやってみようということになりました。
その作業を行う中で、森林には間伐が必要なこと、日本の林業の抱える問題、割り箸が輸入に頼っていること・・・、などを話して、割り箸問題の抱えるさまざまな状況を知ってもらうことが必要ではないかと・・・。
材料は、それぞれの会社などで排出された端材を持ち寄って行うことで進めています。
そして、それぞれの木の特徴などを紹介してもらい、参加者がそれぞれに好きな木で箸をつくるという企画です。
お箸を作ったら使ってみたくなりますね。そのお箸で夕食を食べられたらなお良いなと考えています。
企画の詳細はこれからですし、はじめてのことで試行錯誤ですので、幅広く参加者を募ることは考えておりませんが、是非にという方がいらっしゃいましたら、ご連絡くださいね。
国産割り箸の見直し (割り箸を使うのは森林破壊になるのか?番外編) (平成20年8月30日)
このブログで以前に割り箸について記したことがあります。
割り箸を使うのは森林破壊になるか?(以降9回連載)
この時、「割り箸は木を伐採して作られるので環境を破壊している」 という認識は誤りだと記しました。
8月30日付読売新聞夕刊(11面)に 「国産割りばし見直そう」 という記事が掲載されています。
「割りばしが環境破壊を招くというイメージを少しでも変えたい」。大学が所有する里山で自然観察教室を13年間続けている京都女子大教授の高桑進さん(60)は9月、京都府内の大学の学生を集め、吉野杉で割りばしを作る特別講義を行う。国産の端材を使うことがミソだ。
割りばしの年間消費量は250億膳で、大半が中国産。自身も、使い捨てに疑問を持つ「マイはし」派だったが、昨年奈良県・吉野を訪ねてから変わった。地元 で杉の端材や間伐材を使った割りばし製造を知り、「無駄がなく、森林整備にも役立つ」と思い、PRを考えた。今春、はし袋のデザインやキャッチコピーを学 生から募った。「国産割りばしの良さを見直してもらうことから始めたい」
少しづつ、こちら向きの風が吹き始めているようです。
私も9月にちょっとした 「箸づくり」 のイベントを計画しています。
今回は内輪で実施して、いろいろと参加者の意見を聞いて、次回は広く周知して行いたいと思っています。
内容については、またこのブログで紹介しますね。
お箸キット (割り箸を使うのは森林破壊になるのか?番外編) (平成20年9月8日)
割り箸とマイ箸について連載をした関係で、随分と材木屋の友人とその話題で話をすることが多くなりました。
材木屋さんの青年会というのがあり、私も仲間に入れてもらっています。
その仲間の1人が、お箸キットというのを作ってくれました。
紫檀の棒2本、紙やすり3種類4枚、オイル
これらがセットになっています。
紫檀は先が細くなるようにカットされています。
これを紙やすりを使って、荒目~中目~細目の順に削って、使いやすいようにしてゆきます。
そして仕上げに、オイルを湿らせた布で拭いて完成だそうです。
作業時間は30分程度とか。
この試作品を見せてもらった横から、会のメンバーが分けて頂戴と購入して行き、あっという間に持ってきた分がなくなってしまいました。
私も2セットほど分けてもらいました。これらを参考に、今木材青年会の仲間と箸作りの企画を立てています。
今回は、仲間内だけで実施予定ですが、その様子についてはまたここで紹介します!
端材を使ったお箸作り (平成20年9月14日)
かねてよりブログに記していた お箸づくり を昨日行いました。
MOTTAINAI をサブテーマに、端材を用いたお箸づくりです。
丸太から板や角材を切り出すと、一番外側の丸い部分が不要な部分として切り落とされます。
これを 端材 と呼ぶのですが、もともと木製の割り箸は、奈良県吉野地方で端材を有効活用するものとして造られ始めたということです。
割り箸の歴史について
その原点に返り、材木屋さんで製材する過程で出た 端材 を持ち寄って、お箸を作ってみようという企画です。
この 端材 は、そのままでは ゴミ として処分されるものですから、正に 「もったいない」 の精神ですね。
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