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木の神様を祀る伊太祁曽神社(和歌山市鎮座)のブログ。

木の国神話の社 禰宜日誌

   

伊勢の神宮 その2(参拝の順序)

伊勢の神宮が20年に1度の式年遷宮を迎え、今年は空前の伊勢参宮ブームのようです。
年間1,000万人の参拝がすでに確実視され、1,300万人程度と目されているようです。

伊勢参宮は江戸時代に数度ブームとなりました。いわゆる「お陰まいり」です。
当時は徒歩での移動しかありませんから、日本全国から歩いて何日もかけて神宮へ参拝をしました。
当然費用も莫大にかかります。「一生に一度はお伊勢詣りをしたい」というのが庶民の夢だったようです。そのため、村の皆でお金を出し合って籤などで選ばれた代表者が伊勢参宮をしたり、身代りに犬を参宮旅行に出したりということもよくあったようです。

さて近年、伊勢参宮に関するガイドブックが数多く出版されています。
いろいろなことが記されているようですが、中には少々誤った記述がされているものあるようです。
そんな中、比較的よく見かけるものについて記しておきたいと思います。



外宮をまずお参りして、次に内宮をお参りするということが、最近の本にはよく記されています。
確かに昔から伊勢参宮の人々はまず外宮にお参りして、次いで内宮という順番でした。また、神宮には「外宮先祭(げくうせんさい)」と言って、内宮よりも外宮からお祭りを行うことになっており、これも「まず外宮をお参りして、それから内宮をお参りする」ということの理由と記されているものもあります。
そのため、しばしばインターネットの質問掲示板などで「内宮からお参りしてしまった」「内宮(外宮)しかお参りしていない」として「よくないことが起こるのではないか」と不安を記す質問を見かけます。

しかし、私は「外宮をお参りしてから内宮をお参りしなくてはならない」という習慣は必ずしも正しくない(というよりも外宮からお参りしなくてはならないといういわれはない)と考えています。
まず、「昔から外宮を先に参拝していた」という事実は地理的理由によると私は思います。つまり、宮川北岸より伊勢に入ってくると必然的に外宮を通って内宮に辿り着きます。ですから、外宮を参拝して内宮を参拝するというのはごく当たり前の順番になります。
現在では交通が発達し、まず徒歩で参宮する人は滅多にありません。
自動車で伊勢に行くのに高速道路を利用すると、伊勢インターチェンジは外宮と内宮のほぼ中間点にあります。国道23号線を使うと外宮の近くは通らず内宮に到着します。県道(旧国道23号線)を通った場合のみ外宮→内宮という順番に到達します。
 電車を利用すると、近鉄電車の場合、伊勢市→宇治山田→五十鈴川という順に特急列車も停車します。昔は伊勢参宮と言えば宇治山田駅下車でしたが、近年は伊勢市(外宮前)、五十鈴川(内宮前)としてそれぞれの下車を案内するものもよく見かけます。つまり、名古屋・京都・大阪方面から特急列車に乗って五十鈴川で下車すると、外宮を飛ばして内宮をお参りすることができてしまいます。
JR参宮線の場合、伊勢市駅を出発すると二見浦・鳥羽方面へ線路が伸びているため、内宮方面に駅はありません。

交通形態の変化が外宮を飛ばして内宮へのお参りを可能にした。(勿論昔から外宮の前を通り過ぎればそれは可能でしたが)即ち、昔はそういう選択肢がなかったというだけではないでしょうか。

「外宮先祭」については天照大神(内宮にお祀りされている神様)が豊受大御神(外宮にお祀りされている神様)を伊勢に招く際に、自らの祭典の前に豊受大御神の祭典を行うように命じられたと『太神宮諸雑事記』という書物に記されていることによるそうです。
通常の祭典はその通りですが、遷宮に関する諸祭については内宮から先に行われます。皆さんの記憶に新しい「遷御の儀」も内宮が10月2日で外宮が10月5日でしたね。
遷宮に関しては神宮においても特に重要な神事であるため、やはり天照大御神の鎮まります内宮から先に祭典を行う様です。

ちなみに、外宮を先にお参りすることについての神宮の見解については、過去記事で紹介していますので、そちらをご参照ください。
外宮先祭 (お伊勢さんのお参りの順序について)http://itakiso.ikora.tv/e866532.html

ちなみに私が卒業した皇學館大學は神職過程があり、私も神職資格を大学で取得しました。
神宮のお膝元の大学ということもあり、入学式の後に神宮参拝をし、神宮参拝をしてから卒業式という順番でした。つまり大学に入学してからその奉告を神様に行い、そして卒業の奉告をしてから卒業証書をいただくということです。この時の参拝の順番が、入学式は内宮→外宮、卒業式は外宮→内宮だったと記憶しています。(ひょっとしたら逆だったかもしれませんが、いずれにしても入学式と卒業式で参拝の順序が違っていたのは間違いありません)
神職を要請する大学での参拝順序がこのようになっていますから、「是が非でも外宮からお参りしなくてはならない」ということはないと思うのです。


神宮に外宮と内宮があることからどちらか一方だけ参拝することを「片参り」と呼び、よろしくないと記した案内もありました。
神宮に関して「片参り」というものでもっとも著名なものは「お伊勢参らば朝熊を かけよ、朝熊かけねば片参り」というもので、朝熊とは朝熊山(あさまやま)にある金剛證寺(こんごうしょうじ)のことです。このお寺は神宮の鬼門の方角にあり「神宮の鬼門を守るお寺」として伊勢信仰とともに盛んになってゆきました。
また、「お伊勢詣りをして加良須に詣らぬは片参宮」などと謳い、神宮近隣に鎮座する加良須神社や、多度大社、多賀大社などとの参拝を対にした歌もあります。これらは、折角伊勢まで来たのだからもう少し足を伸ばして別の神社仏閣を観光しようということからのキャッチフレーズとも、各神社仏閣が参拝客獲得のためのキャンペーンだとも考えられます。

しかし、いずれにしても「内宮だけ」「外宮だけ」という参拝に対して「片参り」という考え方はなく、上記のような「内宮・外宮いずれかだけ参拝することを片参りと呼び」というのは片参りの誤った理解といえるでしょう。

次回は、内宮・外宮それぞれでの参拝順路と作法について記したいと思います。

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